第4回 トップの径の違いがヘラウキに与える影響とトップを見る目の錯覚について

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1.前書き

前回は、「トップの素材の違いがヘラウキに与える影響」について、分析を行ってきた。

前回の実験から、「ウキへの荷重に対する変化量は、水面上のトップの容積によって決まり、水中のボディ形態、浮力、材質とは無関係である。」という「アルキメデスの浮力の原理」にヘラウキがあてはまることがわかった。

それでは、トップの径が異なる場合には、何が影響するのであろうか。


2.トップの容積

(1)具体的考察

トップの径は概して、パイプトップは太く、ムクトップは細いということが言える。

円柱の容積は、「r(半径)×r(半径)×3.14(円周率)×高さ」で求めることができる。

パイプトップ

1.2mm×1.2mm×3.14×100mm=452.16

ムクトップ

0.8mm×0.8mm×3.14×100mm=200.96

*ただし、テーパーがないと過程する。

上記の算式より、パイプトップはムクトップの2倍以上の容積を有することがわかる。

通常、パイプトップのウキは、トップの長さが、ボディ+足の合計より短いのに対して、ムクトップのウキは、トップ長さが、ボディ+足の合計より長いのが通例である。

これは、「アルキメデスの浮力の原理」である容積の差がオモリ負荷量の差であることから、ムクトップのウキは、トップを長くすることにより、この差を補っているとも考えられる。

ムクトップは、PCムク、グラスソリッドとも比重は水よりも重いため、なじむ速度は速くなる。

しかしながら、長さが長い、つまりトップのストロークが長いことから、釣り人の側には、ゆっくりなじんでいるような錯覚があるのではないだろうか。


(2)エサ使いの幅の広がり

ムクトップウキの使い方は、パイプトップウキのように、「なじんで戻してツン」というアタリを狙うのではなく、なじんでいく途中のアタリを取るのが主流である。

これは、ハリスのストロークに加えて、長めのトップのストロークにより、動いているエサにしか興味を示さないヘラブナに、エサを追わせながら食わせるというイメージである。

また、パイプトップではなじみがでないような軽いエサでも、トップの自重により、エサをなじませることができ、エサ使いの幅を拡げることができる。

前回の盛期のムクトップ使用と同様、こういった一手も、ヘラウキに使われている素材の特性を理解すれば、応用できるのではないだろうか。


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3.トップを見る目の錯覚について

トップの塗り幅は、トップの先端部になればなるほど広くなっている。

また、トップの塗りは何故、@赤A黄緑BオレンジC黄緑D赤(以下同じ配列で続く)や@オレンジA黄緑B赤C黄緑Dオレンジ(以下同じ配列で続く)が多いのであろうか。

以下、「トップを見る目の錯覚」を考察することにより、トップの塗りについて、解説を行っていきたい。


(1)具体的考察

以下の画像をご覧いただきたい。


トップを見る目の錯覚(1) トップを見る目の錯覚(1):

先端が太くなる逆テーパートップに見えないだろうか?

配色や塗り幅は、尽心作の標準のトップの塗り仕様である。

実は、外径1.4mmのテーパーがないトップである。





トップを見る目の錯覚(2) トップを見る目の錯覚(2):

トップ先端にいくほど、塗り幅が狭く見えないだろうか?(先端@赤とA白を除く)




トップを見る目の錯覚(3)

実は、トップ先端@赤とA白を除き、全節7mmで塗り分けたトップである。





トップを見る目の錯覚(4) トップを見る目の錯覚(2):

トップ2節目の白は他の節と比べて、細くまた、幅が狭く見えないだろうか




トップを見る目の錯覚(5)

実は、トップ先端@赤を除き、全節10mmで塗り分けたトップである。また、1.0mmのグラスソリッドでテーパーはついていない。





(3)解説

多くのヘラウキのトップは、逆テーパートップを除き、先端が細くなるようにテーパーがついている。

これは、ウキが立ち上がる際の水の表面張力を軽減するよう細工されたものである。(ヘラウキが受ける水の抵抗については、改めて解説する。)

この間、お風呂場での実験で感じたことは、ウキが立ち上がる際の水の表面張力は、意外なほど強いということであった。

テーパー付のトップの場合、上記写真4のように、同じ塗り幅で塗ってしまうと、上部ほど塗り幅が狭く見えてしまう。これでは、風で波立つ際には、細かすぎて見づらいと感じることもある。

これに対応するために、多くのヘラウキのトップの塗り幅は先端にいくほど、幅が広くなっていると考える。

逆を言えば、テーパーの付具合を研究すれば、実際は塗り幅を僅かずつ増やしていながら、実釣時には、同じ幅で見えるということも可能である。

また、色には、暖色と寒色があり、暖色は、赤橙、橙、黄橙、黄といった色が該当する。これらの色は、実際よりふくらんで見える膨張色であり、また、進出色といって近くに感じる色でもある。

写真2で赤が太く膨らんで見え、白が細く幅が狭く見えたのもこれが理由である。

それでは、暖色ばかりで配色すれば、トップは見やすいのであろうか。

暖色ばかりの配色はコントラストが弱くなるため、これまた、見づらいトップとなってしまう。このコントラストを出すために、赤や橙の間に中間色的な黄緑をはさむのである。

そして、勝負目盛りといった「アタリを取る位置」や「エサ落ち目盛り」に見やすい暖色系の色である赤やオレンジを配色するのが、現在の一般的なトップの塗りである。


(4)トップの塗装について

私自身もトップの塗装については、暗中模索状態が続いている。

トップの見やすさは、@黒帯部分の幅、A全体の目盛りの幅、B色のコントラスト、C黒帯部分のつや消し、で決まるのではないかと思っている。

また、塗料はできるだけ薄く、特にトップの塗装はウキの立ち上がりにも影響することから、薄く軽く塗るのがポイントである。

塗料の発色と塗料を薄く軽く塗ることは相反する問題であり、どうすれば薄く軽く塗ってもきれいに発色するかを考えなくてはならない。

パールトップ以外のPCムク、PCパイプ(リコーハイテクトップ等)、グラスソリッドは、白の下塗りをするか、蛍光塗料を2度塗りしない限り、きれいな発色は得られない。

ただし、パールトップはもともとの素材が白いので、下塗りなしでもある程度の発色は得られる。

私見であるが、蛍光塗料を2度塗りするよりも、白を下塗りするほうが、発色の均一性が得られるように思う。また、筆で白下塗りするよりも、エアブラシで吹き付けるほうが、薄くかつ均一に塗ることができる。

私の場合は、パールとPCムクを併用することから、エアブラシを使って、白の下塗りを行い、下地を均一化している。ただし、素材の違いから、エアブラシでの吹きつけ量は、PCとパールで変えている。

逆に白を吹きすぎると、下地の白が強すぎて、蛍光塗料、特にオレンジ色が発色しない。

黒帯については、様々な塗料を試したが、現在はカシューの艶消し黒が、艶消し度合い、塗料の食いつきが一番いいように感じている。

ただ、濃度調整が難しいのが難点あるが、これを薄く2度塗りすることにより、この問題を解決している。

私は、エンジンウレタンによる上塗りは、トップが重くなる気がするので行っていない。

次回は、「ボディの形状の違いがヘラウキに与える影響」、解説していきたい。

以上

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