「ウキを知りたい −基本を覚えて使い分けよう−」1


第1回 ヘラウキの各部パーツについて

12回にわたり、「ウキを知りたい −基本を覚えて使い分けよう−」ということで、ヘラウキ製作者側から見た、ヘラウキの各パーツの分析、水の抵抗、ヘラウキの使い分け等、ヘラウキに関する様々なことについて、考察していきたい。

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1.前書き

ヘラウキは大別して、3つのパーツからなる。

具体的には、@ボディ、Aトップ、B足 である。ボディと足をあわせて、ボディと呼ぶこともある。例えば、2004年までのG杯九州地区予選では、ウキはボディ13cm以上という規程になっていたが、このときのボディとは、ボディと足を足した長さが13cm以上ということである。



2.ボディの素材とその変遷

ヘラウキのボディは、現在、孔雀の羽根とカヤが主流である。

過去で言えば、桐、バルサ、発砲スチロール、珍しいもので、ゴーチョ(ヤマアラシの毛)などがあったが、現在は、カンザシウキやナイターウキで、バルサ材や発砲スチロールを使った物が見られる以外は、ほとんど姿を消してしまった。

孔雀の羽根とカヤを比較してみると、

(1)孔雀の羽根

長所は、@カミソリも欠けるほどの硬い表皮による耐久性、A白い羽根の美しさ

短所は、@加工が難しい、硬く、真円ではない。A近年では鳥獣保護や鳥インフルエンザによる輸入量減少に伴う良材不足、B天然素材ゆえの選別によるコスト高 がある。

(2)カヤ

長所は、@加工がやさしい、柔らかく、真円に近い。A素材が入手しやすい、Bコスト安、また、羽根に比べて選別する必要がない。

短所は、@孔雀の羽根に比べると耐久性が劣る、A浮力が孔雀の羽根に比べると弱い、B素材そのものは白くない。といった点がある。

最近では、多くのトップトーナーメンターの方々が、自分のイメージ通りのウキを追い求め、カヤウキを自作されている。


3.トップについて

トップは大別して、パイプとムクの2つのカテゴリーに分類される。

パイプは、トップの中に空気が入っている。ムクは素材のみで、中に空気は入っていない。

パイプの太さには、細い順で、極細→細→中細→太→極太の種類がある。

変わりトップとしては、逆テーパートップ、上ムク下パイプ(上部はソリッドで下部はパイプ、関西に見られる)、上パイプ下ムク(上部はパイプで下部はムク、大バラケを使った角麩の釣り用)、パイプとムクの交互(視認性に優れている)がある。

素材の違いにより、表1のように分類することができる。

No. 大分類 No. 中分類 特徴
(1) パイプ @ セル 長所は肉が薄く、軽いことから、サワリも的確に表現する。短所は、熱に弱く、保管に気をつけないとトップがすぐに曲がってしまう。また、最近では素材が入手しにくくなっている。
    A パール 肉厚は、セルと後述のポリカーボとの中間である。長所は、素材そのものが名前のとおりパールにように白いので、蛍光塗料の発色がよい。短所は、セルほどではないが、熱に弱く、保管に注意が必要である。また、セルと同様、熱で伸ばして加工しているので、素材にバラツキがあり、選別が必要である。
    B ポリカーボネイト 長所は、熱に強く、曲がりがほとんどない。素材のバラツキも少なく、丈夫で折れにくい。チョーチン釣りで、竿先にトップが当たっても破損が少ない。短所は、肉厚が、上述のセル、パールの中で一番厚いが、最近では、肉薄の改良されたものも出てきている。表面がツルツルで塗料の食い付きが悪いため、トップの塗装の前に表面を荒らす必要がある。素材そのものは、白くないため、トップの塗装前に下地塗装が必要である。
(2) ムク @ グラスソリッド 長所は、素材自体が硬くはりがあるので、ロングトップに使用しても、水切れがよい。また、加工しやく、一般的な釣具店で購入が可能である。短所は、比重が素材の中で一番重いため、その特性生かすような使用が必要。
    A ポリカーボネイト グラスソリッドより、比重が軽く、パイプとグラスソリッドの中間のような特性を持つ。また、比重が軽いので、グラスソリッドよりも太いものが使用でき、視認性が向上できる。短所は、@素材自体が柔らかいため、ロングトップに使用すると水切れが悪いこと、素材自体が柔らかいため、カッターでの加工は難しく、回転させて紙ヤスリで削りだす必要がある。

4.足について

ヘラウキの足の素材も、トップと同様、様々な種類があり、それぞれ以下のように分類することができる。以前は、オールピーコックと呼ばれるものもあったが、最近では姿を消してきたため、割愛した。

No. 分類 特徴
(1) 竹は竿の素材としても使用され、見た目では足の素材として、一番マッチングする。また、比重が軽く水に浮くことから、ウキ全体の浮力(復元力)を増加させることができる。短所は、カーボンやソリッドと比較して強度が低い。このため、細く削りだせない、また、素材自体に曲がりがある。このため、底釣り用のあまり長さが必要でないタイプによく使用される。
(2) カーボン 比重は重く水に沈む。また、強度があるため、細く長い足が製作可能である。こういった性質を生かして、浅ダナ用足長ウキの足素材として、多用されている。また、硬度が高い(硬い)ため、ウキが立った後、安定する。短所は、加工が難しいこと、特に硬度が高いことから、羽根とカーボンの接合部分にクラック(ひび)が発生しやすい。
(3) グラスソリッド 比重は重く水に沈む。また、強度があるため、細く長い足が製作可能である。ただ、カーボンよりも硬度が低い(柔らかい)ため、ウキが立った後の安定感は、カーボンを足に使ったウキよりも、ブレが発生しやすいように感じる。しかしながら、カーボンよりも加工しやすいので、上記のようなクラックの問題はほとんど発生しない。

5.各部パーツの比重について

第2章では、各部パーツの比重について、分析を行いたいと思います。

ご存知のとおり、水の比重は1でこれよりも重ければ水に沈み、軽ければ水に浮きます。

この比重を分析することにより、第3章以降のウキの立ち上がり、復元力を深く理解することが可能になると考えています。


2.比重について

ご存知のとおり、水の比重は1で、これよりも重ければ水に沈み、軽ければ水に浮く。ヘラウキを構成する各パーツの比重を分析することにより、次回以降のウキの立ち上がり、復元力を深く理解することが可能になると考える。

比重という言葉を辞書でひくと、「ある物質の質量と、それと同体積をもつ標準物質の質量との比。通常、セ氏四度の水を標準物質とする。」とある。簡単に言えば、比重とは、水1立方センチメートル1gに対する当たりの重さの数値比較である。

試験片はヘラウキの製作に使用しているものをそのまま使用しており、孔雀の羽根やカヤ、竹は天然素材であることから、バラツキがある。また、試験片の重量を測定する計量器についても、プロユースのものではないので、この結果はあくまで、目安ということで、ご理解をお願いしたい。

表の右側には、書籍やWebサイトで調べた数値を参考として、掲載している。

No. 分類 比重 参考(書籍やWebサイトで調べた数値)
クジャクの羽根 0.17
カヤ 0.23
竹(編み棒の0番) 1.01 0.69
ポリカーボネイト 1.27 1.20
カーボン 1.40 1.80
グラスソリッド 1.91 2.50

結論:比重の軽い順:孔雀の羽根→カヤ→竹→ポリカーボネイト→カーボン→グラスソリッド

確かに、試験片を風呂場で沈めてみると、孔雀の羽根とカヤは浮くが、それ以外は上記の順番でゆっくりと沈んでいき、グラスソリッドが沈むのが一番早い。

*竹の数値に一般に公表されている数字と大きなヒラキがあるのは、編み棒は比較的、竹の表皮に近い硬い部分を使用しているためと思われる。



次回は、「第2回 足の素材と長さの違いがヘラウキの立ち上がりに与える影響について」、実験を交えながら、解説していきたい。

以上

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